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近藤愛助展「The Past in the Present」

2018.07.10 Tuesday | ギャラリー情報

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近藤愛助展
「The Past in the Present」 
 


 現在ベルリンで活動中の近藤は、「物質と記憶−存在と不在」をコンセプトに作品制作を行なっています。近年では近藤自身の曾祖父の47年間に亘った米国生活と、太平洋戦争中米国に設置され日系人約12万人を収容した強制収容所をテーマとして扱っています。

 本展は、 「現在の中に現れる過去」をコンセプトに、近藤が昨年ACC日米芸術交流プログラムを受けて実現させた収容経験者へのインタビュー、そして、日系アメリカ人についてのリサーチを基に制作された映像を中心に、写真、ドローイングを交えて構成されます。他者と自己、現在と過去、そして自国と他国という多視点を含んだ本展覧会は「移民 −アイデンティティ」という今日的なテーマを、過去と現在の交差点から問いかける試みでもあります。



□会期|
 2018年8月28(火)- 9月9日(日)
 11:00-19:30、日曜-18:00、最終日-16:30、月休
 入場無料

□event|
 8月28日(火)参加費500円 予約優先(mail)
  18:30〜19:00 
  レセプションパーティー
  19:00〜20:30
  アーティストトーク&アーティスト・イン・レジデンスについての話

□会場|
 Gallery TURNAROUND
 仙台市青葉区大手町6-22久光ビル1F
 info@turn-around.jp
 


東日本大震災と日系人収容所
市原 研太郎

世界の現代アートに、社会的、政治的表現が目立って増えてきたのは、20世紀末のことだった。それは、アートの活動における多文化主義の潮流の隆盛と機を一にしていた。すなわち、社会的、政治的なメッセージを発信する切迫した必要が、それまでアートの主流を形成してきたマジョリティ(欧米の白人男性)ではなくマイノリティの側にあり、それが彼らの称揚する文化的多様性とともに作品化されたのである。
しかし、なぜマイノリティは、アートの本来の価値である美的なものを差し置いて、社会的、政治的内容を優先したのだろうか? それは、マイノリティが社会的、政治的な弱者として指定され、その不平等の不利益を被ってきたからである。
世界のマイノリティ、先進国のジェンダー、レイス、エスニシティ、セクシュアリティのマイノリティに止まらず、中心の先進国に対する周縁の新興国の人々(それ自体が世界のなかのマイノリティである)から、差別や抑圧に抗議の叫びを上げるアーティストが次第に多くなった。だが、それがアートの世界で常識となるのは、21世紀を待たなければならなかった。
しかし、なぜか日本ではその表現の傾向に火が点くのが遅かった。その理由は簡単である。日本は自らをマイノリティとも、日本にマイノリティがいるとも、ほぼ無意識に認めなかったからである。しかも日本は、他のアジアの諸国のように植民地化されることがなかった。逆に、西欧の列強に対抗してアジアの侵略を企図したのだ。しかも戦後は、不都合な真実には蓋をするかのように、戦前・戦中の軍国主義の軌跡を忘れ去ろうとした。
その日本に社会的、政治的表現が出現するようになったのは、自然の猛威とその余波で深甚な被害を蒙った東日本大震災以後である。人工であれ自然であれ被害者にならなければ、その痛みは理解できないということなのか? 日本にもマイノリティの犠牲者がいたのにもかかわらず、アートは彼らを代弁することはなかった。
第二次世界大戦におけるアメリカの日系移民も、そうした差別と迫害を受けたマイノリティの人々である。彼らの経験や声は、戦後長らくアメリカのみならず日本でも関心を抱かれたり知られたりすることはなかった。
そこに自らの曾祖父にアメリカ移民を持つ一人の日本人アーティストが現れ、日本の故郷と曾祖父が生活したアメリカの西海岸に赴き、地道にリサーチしながらドイツに在住する自らの経験と重ね合わせて作品を構想した。その成果は、日本の故郷とドイツのベルリンで幸いにも日の目を見た。
彼にとってまさにかけがえのない表現となる祖先のリサーチとその成果の作品が、大震災の被災地である仙台に、今回お披露目されるという。その意義は小さくない。というのも、マイノリティ(震災の被害者もマイノリティである)の経験の共有という意味で、彼の表現が仙台の地でどこまで深く浸透し受容されるのか。そして、その応答というかたちで大震災の被害と記憶が再確認されるのかが、彼の個展によって試されるからである。
その時、アメリカの西海岸にあるアーティストの曽祖父が送られた日系人収容所と大震災の被災地である仙台は、時空を越えてつながるだろう。そして、展覧会に居合わせる観賞者を介して響き合うはずである。



近藤愛助 Aisuke Kondo

1980年静岡生まれ、2001年Bゼミ修了。 08年にはベルリン芸術大学造形学部マイスターシュラー課程を修了、現在ベルリンを拠点に活動を行う。12年にはクンツェ芸術財団(ドイツ)より芸術活動助成を受ける。 17年にはACCの日米芸術交流プログラムにより、サンフランシスコとロサンゼルスに滞在、18年9月からは文化庁新進芸術家海外研修制度によるサンフランシスコ研修を予定している。これまでの主な展覧会に「PRIVATE / PUBLIC」 ヴォルフスブルク市民ギャラリー、ドイツ、2015) 、「サンフランシスコに移民として暮らしていた曾祖父について(またはベルリンに移民として暮らしている私について)」(京都芸術センター・ギャラリー北、2016)、「About M.K.」 ( 東京アートミュージアム、仙川、2016)、「here where you stood」(MINTMOUE、ロサンゼルス、2017)、「diasporaMemoria」(ベルリン・シュテーグリッツ区市民ギャラリー、ドイツ、2018)などがある。



チラシ A5/4P
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アーティスト・イン・レジデンス(Artist in Residence)とはなにか −−−−
 他地域からアーティストを一定期間招へいし滞在中の創作活動を支援する事業で、日本では90年代から関心が高まり、主に自治体主導で数多く実施されてきました。
 東日本大震災以降、多くのアーティストが被災地を訪れ、滞在し、様々な表現がなされてきましたが、なかには復興や地域振興、活性化といった要素が加わるものも多く、作家、住民がともに疲弊するケースや、大きな違和感が残るケースも少なくありませんでした。
 いわゆる直接的な当事者ではない者がその土地に赴き、関わり、作品や表現に落とし込むことの意義とは。そしてわたしたちはそれらをどう見るのか。
 本企画では、レジデンスとはどういうものかをあらためて考え、今後、仙台という土地で成り立たせることができるのかを追求していきます。


主催|Gallery TURNAROUND 
助成|(公財)仙台市市民文化事業団 
協力|コトバ事務所