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展示概要

タイトル 石川雷太 WAVE OBSESSION
アーティスト 石川雷太
会期 2010.10.15~2011.12.12

評論

石川雷太の作品は、多種多様な引用(=サンプリング)によって構成されるインスタレーション(=空間そのものを作品とする仮設芸術)です。鉄板や鉄パイプ、大量のガラスの破片、骨、血液、肉、放射性鉱物、武器、TVニュースの画像、ノイズ、政治的な言葉、日常的な言葉、さらには観客の手によって実際にボードや壁に書き込まれてゆく言葉や絵まで。これらの一見唐突な、しかしラディカル(過激な)な組み合わせは、私たちの古い思考のブレイクスルーを促し、新しい世界に向けてのヴィジョンを開く装置でもあります。

今回の個展は『WEVE OBSESSION』と題し、〈鉄〉と〈電波〉と〈光〉と〈放射線〉をテーマに、それらをめぐる「人間の欲望」に焦点をあてます。ガイガーカウンターと9台の液晶モニターによって構成される巨大な鉄のオブジェ、重厚な「希望の実験室」にぜひ足を踏み入れてください。

☆会期最終日12月12日(日)の16時より、石川雷太/Erehwonによるノイズ・サウンド・パフォーマンスの実演があります。

ライター:関本欣哉

作家略歴

1965年生まれ。美術家。鉄板や鉄パイプ、ガラス、文字等、多種多様な要素で構成されるインスタレーションを発表。森美術館、府中市美術館、イスラエル美術館、多摩美術大学、東京大学駒場寮、などで展示。現在は、鉄板や工業用スプリングなどの打撃音・摩擦音をライブ・ミックスするインダストリアル・ノイズ・ユニット「Erehwon」、密教系の瞑想に着想を得たパフォーマンス・ユニット「混沌の首」の活動でも知られる。日本即興協会JFISのメンバー。
http://www.myspace.com/erehwonofficial

WEVE OBSESSION
人間と自然、あるいは他者。ガスマスクを着けなければ近づけない『ナウシカ』の腐海が、外界と隔絶したその深部で実は〈自然〉を守っていたいたように、私たちに都合の良い環境だけを正しい環境と考えるのはまちがいだ。遺伝子を破壊する放射線も自然な環境の一部だ。

私たち人間は〈自然〉を暴力として捉え、それをいかにコントロールするかということに尽力してきた。時には生活のために活用し、時には破壊の道具として飼い馴らそうとする。「都市」と「環境」と「人間」を両立させようとする時、未来がどのような形をとるのか。「暴力」的な自然の断片である〈鉄〉と〈電波〉と〈光〉と〈放射線〉を用いたこのインスタレーションは、そのひとつのサンプルである。

「建築」「アート」「思想」「言葉」、これらは常に人間と環境との不穏なせめぎ合いの上に生産されてきた。投げられた骰がもとにもどせないように、過去を参照しても無意味だ。むしろ逆に、そこにある混沌と過剰を新たなる未来の美学として再構築することにこそ可能性と希望があるのだと私は思っている。
物質とスピード、その美意識に焦点を合わせた展覧会。ぜひご覧下さい。

石川雷太
★展示の一部に放射線を体験するコーナーを設けます。十分にご注意ください。